IPv6基礎学習 第一回 座学編 「IPv6の利用状況やIPv4の違いについて説明」

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はじめに

今回はIPv6アドレスについて書きます。投稿は合計4回を計画してます。

本投稿となる第一回ではIPv6アドレスに関する座学編と称しIPv6の利用者状況やIPv4アドレスとの違いについて説明します。第二回も座学編となりIPv6ネットワークを構築をする上で必要となるIPv6アドレス表記とIPアドレス自動割り当ての仕組みについて説明します。第三編では演習編と称しCisco CSR1000vを使い座学で学んだ動作確認をします。第四回は更にIPv6 BGPネットワーク環境を構築し動作検証をし、第五回でBGPネットワークの疎通確認と障害試験を実施してみます。

では、第一回となる座学編からスタートします。

第一回座学編IPv6の利用状況やIPv4の違いについて説明
第二回座学編IPv6アドレス表記と自動割り当てについて説明
第三回演習編Windows10+Cisco CSR1000vで簡易なIPv6ネットワークの構築
第四回演習編Cisco CSR1000vでIPv6 BGPネットワークの構築
第五回演習編Cisco CSR1000vでIPv6 BGPネットワークの疎通確認と障害試験

IPv6アドレスの現状

IPv6利用者数はどの程度なのか?

Googleは自社サービスにIPv6でアクセスしているユーザ数の比率を開示しています。(リンク先:Google IPv6 統計データ
この比率をみると、ここ数年で大きな右肩上がりとなっており、2021年5月時点で35.50%となっておりました。ただ、それでもIPv4アドレスでのアクセスが半数以上となるのでIPv6アドレスが主流になるにはまだ時間がかかりそうです。

また、JPNICでは国内の回線事業者のIPv6普及状況に関するデータやリンクを公開しています。(リンク先:JPNIC IPv6関連情報
その中からアクセス網を提供している事業者3社となる『フレッツ光ネクスト』、『KDDI AUひかり』及び『CTCコミュファ光』のIPv6普及率を収集したデータがありましたのでグラフ化してみました。
※『フレッツ光ネクスト』のみ契約数のデータが存在しました。『KDDI AUひかり』と『CTCコミュファ光』は普及率データしかありませんでしたので、グラフを分けて作成しています。

2020年12月までのデータですが『フレッツ光ネクスト』のNGN網でのIPv6普及率は80%近くまであります。『KDDI AUひかり』及び『CTCコミュファ光』は完全IPv6化ができています。国内のアクセス網に関しては順調にIPv6化が進んでいるようです。

上記はアクセス回線の普及率となりますが、スマホなどのモバイル端末のIPv6普及率も確認したかったのですが、Webでそのようなデータが見つかりませんでした。ただし日経ネットワークの2020年10月号にNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク合わせての数値なり、2018年7月に17.1%、2020年7月に35.4%普及していると記述がありました。モバイルに関しても順調に増え続けているようです。

IPv6とIPv4の違い

ここからはIPv6とIPv4の大まかな違いについて説明します。

違い其の一『アドレス数』

大きな違いはIPv6アドレスの数です。IPv4アドレスは約43億個のところ、Ipv6アドレスは約340燗(かん)です。燗を調べたら10の36乗…途方もない数ですね。膨大なアドレス数の為、基本的にNATを必要としません。

違い其の二『IPヘッダー』 

IPヘッダーが非常に簡素化されました。
IPv4はアドレスフィールド以外に10個のフィールドがありましたが、IPv6は重要なフォーマットのみ引継ぎ6個に減らされました。(以下、Wikipediaから。リンク:IPv4ヘッダーフォーマットIPv6ヘッダーフォーマット)その為、ルーティング処理にかかる負荷を軽減してくれます。
なお、IPv6にも拡張情報は存在するのですが、標準のフィールドには入らず、データ部に追加する仕様となります。

IPv4のヘッダーフォーマット
IPv6のヘッダーフォーマット

違い其の三『プレフィックス長(サブネットマスク)』

IPv6のユニキャストアドレスではプレフィックス長を固定とすることが推奨されています。(※IPv6のユニキャストアドレスは後述有り)
IPv4の場合、アドレスの前半部にあたるネットワーク部と後半部にあたるホスト部の長さを可変することが可能です。それぞれを足して32ビット長になればOKでした。IPv6では前半部64ビット、後半部64ビットを固定長にすることが推奨とされています。名称も前半部をプレフィックス、後半部をインタフェースIDというようになりました。
なお、ISP等は64ビットより広い範囲でルート情報を広報する場面では必ずしも64ビットの固定である必要はありません。また実際にはプレフィックス長を可変にすることは可能ですが、インタフェース識別子を自動生成させるいくつかの標準機能が64ビットを前提に設計されているため、64ビットを推奨としています。

違い其の四『アドレス種別』

IPv6はIPv4と比べてアドレス種別がいくつか変わりました。内容が細かくなるので以下、別章で説明します。

IPv6のアドレス種別について

IPv6アドレスはIPv4と違い、アドレス種別にいくつかの変更点があります。ここではIPv6の主なアドレス種別について説明します。

ユニキャストアドレス

ユニキャストアドレスをIPv4と比較した表です。基本的にIPv6では『グローバルユニキャストアドレス』・『リンクローカルユニキャストアドレス』・『ユニークローカルユニキャストアドレス』の3種類から構成されます。
なお、過去に『サイトローカルユニキャストアドレス』というものが存在しましたがセキュリティの問題が指摘され廃止されたそうです。

また、IPv6アドレスのリンクローカルユニキャストアドレスはIPv4のブロードキャストドメインに相当する範囲でしか通信ができません。主に、グローバルユニキャストアドレスの割り当て時の制御用通信に使います。

ブロードキャストアドレス

ブロードキャストはIPv6では廃止されました。その為、同報通信にはマルチキャストが使用されます。つまり、IPv4でいうARP(IPアドレスからMACアドレスを検出するためのプロトコル)は、IPv6ではマルチキャストで行われます。また、ARPではなくICMPv6が使用されるようになりました。

マルチキャストアドレス

マルチキャストですがこちらはIPv6でも継続的に利用可能で特定のグループに属すホストに送信する為のアドレスとなります。
また、マルチキャストの一般的な使用例としての特定のプレフィックス(ネットワーク)への一斉通信の他に、OSPFの管理通信でアドレス番号が予約されているという点でもIPv4から大きな用途変更はありません。

但し、先述の通り、IPv6ではブロードキャストアドレスが廃止されており、マルチキャストアドレスが使用されることになっているという点は変更点となります。

第一回は以上となります。次回、第二回 IPv6アドレスの表記と自動割り当ての説明となります。

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